地獄ートラウマを持つ方、心の優しい方は読むのはやめてくださいー

前の職場は、ブラック企業だった。

パワーハラスメントなんてしょっちゅうだった。

時々、訪ねてくる本社からの偉そうな鬼は店長をいつも怒鳴りバカにしていた。

「おまえ まだ若いよな。充分転職先考えられるよな。」

「おまえの代わりなんていくらでもいる。さっさと結果出せよ。今度はクビだぞ。」

店長は笑顔で受け流していた。

でも、仕事中に店内で時々苦しそうな疲れた顔を見せる時があった。

 

実は、私はそのころ統合失調症と誤診されていた。

当然、障害者手帳を所持していて、障害者枠でパート(商品の品出しと清掃)として働いていた。

障害者だから、店長は私に「大丈夫?疲れてない?何か困ったり悩んでいることあったら相談して。」といつも配慮してくれていた。

私は、店長こそいつも大丈夫なんだろうか?疲れていないんだろうか?困ったり悩んだりしてないのかなあって思っていた。

 

店長は優しいし、パートで働いている仲間も優しくて真面目に働く人たちだった。

時々パワハラ鬼が来るのが怖かったけど、自分に与えられた仕事を不器用なりにこなしていた。

3年は頑張ってみようと思っていた(職歴で一番長く続いたのって10か月)。

 

だけど、突然店長は辞令でK県へ異動になった。

次に来た店長は、要領がよくてソツなく仕事をこなしていた。

前の店長は不器用で休む暇なく一生懸命仕事をこなしていたのに対し、ポイントを押さえるのが上手というか、周りの空気をうまく読んで、本社のパワハラ鬼にも何にも怒られていなかった。

 

だけど、その店長って健常者のパートさんにはよく話を振ってコミュニケーションをとるのに、精神障害者だからなのかよく分からないけど、全然私に話をしなかった。

私が仕事での相談事を持ちかけると「これは、こうしておいて。」「こっちの仕事は小鳥居さんには無理なんで、僕がやっときます。」と必要最低限のコミュニケーションしかとらなかった。こっちも対人恐怖だったし、別になんとも思っていなかったけど。

一人の40代後半のパートの女性がいて、その女性(Aさん)は私と出勤時間も退勤時間も一緒だった。退勤時間に、

「なあ、小鳥居さん?今の店長って好き?私、大嫌い。なんか私がおばさんなんか話しかけてくれんし、そのくせ若いパートさんや気に入ったパートさんには話かけていて、えこひいきする所が嫌い。はよう異動して別の所行かんかいなって思ってしまう。」

『あー、そういえば私も話かけられませんよ。でも、別に何とも思いませんけどね。』

その店長は、Aさんの願いどおり三カ月で異動が決まった。

私は一応お世話になったし、挨拶しに行った。

「店長、異動になるんですね。今までありがとうございました。」と言うと、笑顔で『そうなんですよ。本社に異動になります。』「えー!すごいじゃないですか?お体に気を付けて、頑張ってください。」『はーい。』というやり取りがあった。

でも、その店長が異動後に仲良しのパートさんに『前の店長って有能でしたね。確か本社に異動になったんですよね。』と言うと「え?小鳥居さん、知らんの?前の店長は異動は異動でも県外の別の店舗で店長しとるよ。」

私は、内心笑顔で嘘つかれてたんだ、騙されたと思った。

 

次に来る予定の店長は、前に今の店舗で準社員として働いていて、パートさんをしょっ中、怒鳴ったり怖い人らしいと聞いて、私は怖くて不安になってきて障害者職業センターのジョブコーチさんに電話をかけて、「また店長がかわるみたいです。次に来る予定の店長ってすごく怖い人らしいです。前にパートさんに怒鳴り散らしていたって聞いて、怖くて…ちょっとサポートお願いできませんか?」と頼むと、ジョブコーチさんが店長が来る日に来て、私の苦手な面“対人恐怖があって感情的に怒鳴られるとパニックになる所”“病気のために、仕事を覚えるのが人の倍かかる所”を説明してくれて、理解してくれていたように思われたけれど…。

最初の印象は、思っていたより怖くない人で良かっただった。全然、怒鳴り散らしたりしないし、パートさんの間でも「あれ?店長になって、怒鳴るのをやめたのかな?良かった。」と言っていた。

だけど、段々と本性があらわれてきて、準社員の人やアルバイトの学生がちょっとミスをすると、「おい!」と口調も荒々しく表情も鬼の面のようにかわってきて、最初は礼儀を正そうとして言っているのかな?と思っていた。

 

時々、地区の偉いリーダーが来ていた。

その人も気性が荒くて、機嫌を損ねると急に怒鳴る、バカにする、最悪だった。

それでも、三年は我慢しようと決めて耐えていた。

でも、ある朝、地区のリーダーと店長がいて、店長が売り場で突然、準社員の男性がなかなか来ないとか言ってイライラしていた。

私はパンを品出ししていたので、直接は見ていなかったけど雰囲気いつもと違って皆ピリピリしていたし、店内には荒々しく怒鳴り声が響いていた。

そして突然、地区のリーダーが

「おいおい。殴ったらあかんやろ?パワハラになるぞ。」と言っていて、ビックリした。え?もしかして店長、準社員の男の人殴ったんだろうか?

 

もう、何なん?ここ。おかしいって。もう辞めたい。

 

朝礼が始まった。

準社員の男性がうつむいていた。

やっぱり殴られたのかな、つらそう…。

地区のリーダーが突如、

「そういえばお前らの中に名札のバーコード?あれコピーしとるやつおらんか?」と言い出した。

名札のバーコードをスキャンしてタイムカードを打つシステムだった。

それが何なの?ときょとんとしていたら、

店長が、準社員

「おい!お前、まさかこの間注意したけど、ちゃんとなおしたんか?」

と切れていて、地区のリーダーが準社員の名札を見て、

「お前!コピーでないか。こんな事して懲戒免職もんだぞ」と笑いながら言って頭をバチーンと音がするぐらい思い切り殴っていて、恐怖と怒りで震えていた。

地獄だ。店長も、地区のリーダーも、地獄の鬼に違いない…。

 

朝礼が終わり、準社員の男性がトイレに駆け込んだ。

私は直接は見ていないけど、多分泣いていたんだと思う。

そのあと、出てきた時に鼻が赤くなっていたし、鼻をすする音でなんとなく察しがついた。

私は段々、地区のリーダーも店長も憎くて許せないと思った。

パワハラホットラインに電話かけたいぐらいに。

 

もう、精神的に耐えられなくなって、数日後、店長に「私は皆みたいに仕事できないし、いっぱいいっぱいでついていけないので、辞めさせてください」やめることを告げた。

店長が「あっそ。で、やめる時期いつ?」と怖い顔で言ってきた。

「そうですね。一か月後ぐらいにやめたら迷惑かかりませんかね。」と言った。

本音は今すぐにでも辞めたかった。

パートさんは優しくて誠実だった。

私が辞めることがわかると

「助かっていたのに、寂しくなる。」とか、「次の職場は決まっとるん?」とか親身になって心配されたり、嬉しかった。

準社員の若い男性も、

「小鳥居さん、やめるん?おれはここでやってくよ。次の職場では長く続くように頑張るんだよ!」

とエールを送ってくれていたっけ。

準社員の男性がここでやってくと決めているので、私はパワハラホットラインには電話しなかった。

二年半しか続かなかったけど、パートや社員がコロコロかわるような職場には気を付けようと思った。

それが勉強できただけでも、無駄じゃなかったって思いたい。